・バークレイズがClaudeで何を始めたのかを短時間で知りたい
・社内でClaudeや生成AIを全社に広げる計画を任されている
・公表された数字を、稟議でどこまで使えるか見極めたい
英国の大手銀行バークレイズが、AnthropicのClaudeを全社に広げると発表しました。開発者の半数にClaude Codeを、という数字が先に広まりましたが、すでに動いている使い方や、公表されていない点は整理されないまま語られています。
バークレイズのClaude導入とは、社員向けの知識検索、メールの仕分け、ソフトウェア開発の3領域にClaudeを広げる取り組みです。先に動いたのは顧客に直接答えない社内向けの2つで、写すべきは規模ではなく、領域ごとの母数の置き方です。本記事では公式発表をもとに、使い方、順番、条件、書かれていないこと、自社の計画への写し方を整理します。
この記事のゴール(読了目安 約8分)
バークレイズが公表した3つの使い方と数字を説明でき、自社のClaude展開計画に母数と人の受け取り所を書き込めるようになる。
バークレイズのClaude導入とは
Anthropicが2026年10月1日、バークレイズのClaude利用を全社に広げると発表しました。新しい導入ではなく、以前からの協業を広げる発表です。
10月1日にAnthropicが発表
Anthropicは2026年10月1日、バークレイズがClaudeの利用を全社に広げると発表しました。発表にはバークレイズのグループ共同COO2名のコメントが載っています。発表元はAnthropicで、2026年10月4日時点ではバークレイズの公式サイトのニュース一覧に同じ発表は見当たりません。
何が「拡大」したのか
両社はすでに協業しており、今回はその範囲を広げる発表です。狙いとして挙がっているのは、ソフトウェア開発を速めること、古いシステムを刷新すること、業務の効率を上げることの3つです。Anthropic側は英国での大きな節目と位置づけ、強いセキュリティと監督のもとで展開していると述べています。Claudeそのものの特徴や料金は別記事で解説しています。

発表の要点
公式発表に書かれた使い方と規模を、表にまとめました。
開発の数字だけが目標で、残りの2つは実績です。「年内に半数へ展開」は決定ではなく見込みとして読みましょう。
社員向けの知識検索
Colleague Knowledge Assistantは、英国の個人向け事業の社員が、顧客対応の最中に必要な情報を探すための道具です。対象の顧客は英国で2,000万人を超えます。
2025年から稼働しており、社内の資料を検索してから答えるRAGという仕組みで動きます。利用した社員は1万6千人を超え、検索は100万件を超えました。公式は、情報に早くたどり着けることで、顧客への対応も速くなったと説明しています。答えるのは社員で、Claudeは答えの材料を探す役です。
1日約12万件のメール仕分け
市場部門のグローバル・マーケッツでは、顧客からの問い合わせメールの処理にClaudeを使っています。届いたメールを分類し、足りない情報を補い、最適な処理の経路を決める流れです。
処理量は1日約12万件で、優先度を付け、担当者が動くのに必要な情報がそろっているかを確かめます。公式の説明は手作業を減らしつつ、担当者が素早く動けるようにするというもので、実際に処理するのは担当者です。届いたメールを人が1通ずつ開いて振り分ける前の整理を、Claudeが受け持つ形です。
開発者の半数にClaude Code
これから広がるのが開発です。バークレイズは、Claude Codeを使う開発者が2026年末までに全体の50%に達し、2027年にはソフトウェアエンジニアの過半になると見込んでいます。
用途は、古い基盤の刷新とソフトウェアの品質の向上です。共同COOは、開発、テスト、セキュリティ、運用の中に、より自律的に動くAIを組み込む方向に進んでいると述べ、技術者が最も複雑な課題に集中できるようにすると話しています。開発の工程がどう変わるかは別記事で解説しています。開発は「何人が使っているか」を全体の割合で示した唯一の領域です。
公表された順番を読む
発表に書かれた時期を並べると、次の順になります。
- 2025年から: 社員向けの知識検索が稼働
- 発表時点で稼働中: メールの仕分け。開始時期は書かれていない
- 2026年末まで: 開発者の50%がClaude Codeを使う見込み
- 2027年: ソフトウェアエンジニアの過半へ
稼働中の2つは、どちらも社員が受け取る前の下ごしらえです。顧客に直接答える使い方は、発表にはありません。知識検索は社員が確かめてから顧客に伝え、メールは担当者が処理を実行します。どちらも、出力に誤りがあっても人が受け取る段階で止められる位置です。社内で受け取る人がいる業務から始め、開発へ広げたと読めます。

規制業種で進めた条件
銀行は規制の厳しい業種です。発表は、大きく複雑で規制の多い組織にAIを入れるには、技術と規律ある統制の両方が要るとしています。そのうえで、バークレイズが置いている条件として次の3つを挙げています。
- 統制: 用途ごとにAIの使い方を管理する
- セキュリティの管理: 安全で統制のとれた環境の中で使う
- 人の監督: AIの用途に人の目を置く
ただし、承認の手順や管理の中身は書かれていません。3つの言葉は公表されたが、その運用は公表されていないと区別しておきましょう。自社で同じ条件を置くなら、3つの言葉それぞれに、誰が何を確かめるかを書き足す必要があります。
発表に書かれていないこと
稟議の資料に引くときに、とくに注意したい空白は次の5つです。
- 契約額と費用: 金額は書かれていない
- 削減効果: 削減時間や応答時間の変化は数字がない
- 導入経路: どのクラウドや契約形態で使っているか
- 推進体制: 誰が承認し、どう広げているか
- 銀行側の単独発表: 公式サイトでは確認できない
公表されたのは利用者数、処理件数、展開の割合です。規模の参考には使えるが、効果の根拠には使えないと覚えておきましょう。全社展開の一般的な進め方は別記事で整理しています。
自社の計画に写すひな形
3つの使い方を、自社の計画に書き込める形に置き換えました。人が受け取る所は、発表をもとにした筆者の整理です。
数える単位はAIが働いた量、母数は届けたい範囲の全体、人が受け取る所はAIの出力を最後に扱う人です。4つの欄が埋まらない領域は、まだ広げる段階にありません。社内ルールの作り方は別記事で解説しています。
【プロの視点】母数を決めてから広げる
全社導入の進み具合は、導入した部署の数やアカウントの数で報告されがちです。しかしそれでは、広がったのか、配っただけなのかを誰も判断できません。部署の数で数えると、1人しか使っていない部署も1部署になります。
見るべきは部署の数ではなく、領域ごとの母数に対して何割に届いたかです。
バークレイズの発表を見直すと、母数があるのは開発だけです。開発者全体を分母に置いたから、50%という目標を立てられました。知識検索は1万6千人という人数だけで、対象の社員が何人いるかは書かれていません。
母数の無い計画では、次の手を決める根拠も持てません。8割に届いた領域は次の領域へ進み、2割で止まった領域は理由を調べる。この判断は割合があって初めてできます。
明日の一歩は、広げたい領域を1つ選び、分母を1行で書くことです。分母が書けない領域は、広げる前に数え方を決める段階にあります。

【waltsu視点】用途より型を移す
3つの使い方は、別々の用途に見えます。しかし型は同じで、Claudeが探す、分ける、書くといった下ごしらえをし、人が受け取って仕上げます。広げるとは、新しい用途を探すことより、この型を隣の部署へ移すことです。
waltsuが置くAIの価値は、時短ではなく試行回数です。型が決まっていれば、新しい部署でも人の受け取り所だけを決めればよく、試す回数を増やせます。用途を一から考える部署ほど、最初の1回までに時間がかかります。
自社でも、記事の制作を全自動から、AIが下書きし人が書き換える形に切り替える方針を決めました。人が手を入れる場所を先に決めたことで、編集を担う人を選ぶ課題も、実際の記事を直してもらう形に決まりました。
明日の一歩は、自社でAIが動いている業務を1つ選び、誰が受け取って仕上げているかを1行で書くことです。

よくある質問
バークレイズはいつClaudeを導入した?
今回の発表は2026年10月1日です。社員向けの知識検索は2025年から稼働していると公式は説明しています。両社は以前から協業しており、今回は範囲の拡大です。最初の契約の時期は書かれていません。
どのクラウド経由で使っている?
発表には書かれていません。導入経路や契約形態を自社の参考にする場合は、推測で埋めず空白のまま扱いましょう。自社で使うときは、契約の形ごとにデータの扱いが違うため、導入時に確かめてください。
削減効果は公表されている?
公表されているのは利用者数、処理件数、展開の割合です。削減した時間や金額の数字はありません。
Claude Codeとは何?
Anthropicが提供する開発向けのツールで、コードを読み、書き、直す作業を手伝います。製品の詳細は別記事で解説しています。
中小企業でも同じ順番で進められる?
規模は違っても、社内で人が受け取る業務から始め、領域ごとに母数を決める進め方は写せます。最初は1つの部署、1つの領域で十分です。
この記事のポイント
・バークレイズは2026年10月1日にClaudeの全社展開を発表した
・稼働中は知識検索と1日約12万件のメール仕分け、開発は見込み
・公表は利用の規模で、効果・費用・導入経路は書かれていない
・展開の前に、領域ごとの母数と人の受け取り所を決める
まとめ
バークレイズのClaude導入は、社内で人が受け取る2つの業務から始まり、開発者の半数へ広げる段階に入っています。公表された数字は規模の参考になりますが、効果の根拠にはなりません。
自社で写すなら、規模ではなく、領域ごとの母数と人の受け取り所です。Claudeの全社展開をどの領域から、どの母数で進めるかに迷ったら、waltsuが計画づくりからご支援します。





